2013年6月15日 日刊木材新聞(2面)
断熱性能とエネルギー使用量
既存住宅で”見える化”を
インテグラルがつくば市で実証実験
インテグラル(茨城県つくば市、柳澤泰男社長)は、既存住宅の断熱性能とエネルギー使用量の見える化を実現する簡易測定ツール「スマートワトソン君」を中内靖筑波大学システム情報工学研究科准教授と共同で、いばらぎ大県創造基金を活用して開発した。このシステムを使って一般住宅と幼稚園、小中学校など公共木造建築物(混構造含む)の実証実験をつくば市の協力を得て昨年11月から今年3月までの期間実施した。
このシステムは、温湿度を計測する「温エアー」と電力量を計測する「見るワット」という測定機を室内に設置し、センサーから無線通信で受信専用パソコンにデータを送りLANでサーバーにつなぎウェブ上でモニタリングをする仕組み。実証実験は、つくば市のつくば環境スタイルサポーターズプログラムの第1号として承認され、個人会員から参加者を募り、つくば市内の東幼稚園(木造・築18年)、東小学校(混構造・同)谷田部中学校(木造・築10年)の公共施設と一般住宅17戸(木造12、軽量鉄骨3、RC造2)を実測した。公共施設は昨年10~12月に3施設で、2回目は2月の最も寒い時期に東幼稚園と東小学校の2ケ所で計測した。
1回目の計測は、まだそれほど寒くない時期で、利用者の関心も低かったが、2回目は寒い時期で、暖房機器をフルに使用し、インフルエンザ、ノロウイルスなどの流行があり関心が高かった。温度環境や暖房機器エネルギー量の把握への関心度は季節に大きく依存し、省エネ意識変化を起こすには季節が重要な要素だということが分かった。
2月の計測は、外気温が最低マイナス3度、最高が10度に達しない非常に寒い時期だった。幼稚園は部屋による差が比較的少ないが、小学校では教室の配置、暖房機器の運転状況による部屋間の温度差が大きい。大きな施設ほど、日射の影響、教室の用途、使用時間、頻度などで差が出ることが分かり、天井高の高い部屋や大開口があるところで外気温の影響が大きかった。「学校などの施設では情操教育が意匠設計で意識されるが、温熱環境へも意識することで室内の温度差を小さくできるだろう」(同社)。幼稚園では乾燥対策として濡れタオルを室内に置いていたが、あまり効果がなく、その効果を数字で見ることもできる。
一般住宅の場合は、自宅の温熱性能を確認したいという住民の参加があった。熱効率などを考慮して設計した住宅は外気温に室内温度があまり影響されることがなく、築2年でも大きな吹き抜けのある家ではなかなか室内が暖まらない状況が分かった。浴室を住宅の真ん中に配置して外皮設計をしっかりした住宅は、常に室内が暖かいことが確認できた。太陽熱を床下の蓄熱層に貯めた住宅は、常に室内が18度以上で、暖房をほとんど必要としなかった。
同社は、無線の周波数を2.4ギガヘルツで使用したが、学校など人が多いところでは電波が遮断されるなどの問題があり、920メガヘルツの周波数帯への通信機器の改善など進めている。同社は断熱リフォームなどを行う場合に、リフォーム前とリフォーム後で温・湿度と電力量を計測し施主に提供できるような仕組みを開発し、リフォーム事業者等へレンタル方式で提供できるように体制を整えようとしている。
日刊木材新聞に「スマートワトソン君」のつくば市実証実験に関する記事が掲載されました
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