STAFF BLOG

2014年9月11日


トータルのメリットで考える、長期優良住宅

前回、平成25年省エネ基準の概要と情勢についてお伝えしましたが、施主からの要望がない、建築費のコストアップが気になる、ノウハウ・技術がないなどの理由から、長期優良住宅などの制度を 利用したことがない方もいらっしゃるでしょう。 長期優良住宅などの制度を利用すると、税金や住宅ローンの金利優遇、そして補助金など、多くのメリットがありますので、是非参考にしていただければと思います。

1.長期優良住宅のコストアップはどれくらい?

長期優良住宅仕様にするためには、どのくらいのコストアップが必要なのでしょう? 少し古いですが、2009年の国土交通省告示第385号の「長期優良住宅に係る標準的な性能強化費用相当額」を見ると、木造の場合、床面積1㎡あたり33,000円かかる、としています。 この試算では、120㎡ほどの建物で長期優良住宅仕様にすると、一般住宅に比べ、396万円コストアップすることになります。 実際にそこまでの金額になるのでしょうか? 長期優良住宅がコストアップする要因は、主に「住宅の性能強化」と「認定取得までの申請費用」があります。 「住宅の性能強化」に必要なのは、主に「耐震性」と「省エネルギー対策」の基準のクリアです。 「耐震性」では、耐震等級2(建築基準法における耐震性の1.25倍)を満たす必要があり、「省エネルギー対策」では、平成25年省エネ基準を満たす必要があります。 例えば2階建てで延床面積120㎡程度の建物にて、「耐震性」を、建築基準法を満たすレベル(耐震等級1)から耐震等級2にするとします。 シングル筋かい(45×90)の追加で存在壁量を上げる場合、各階合わせて10箇所ほど追加すれば、耐震等級2を満たす状態になります。 接合部の金物や工事手間を含んで1箇所1万円と計算した場合、追加費用は10万円程度です。 「省エネルギー対策」では、(断熱材やサッシにこだわりが入ると、きりがありませんが)平成25年省エネ基準を最低限満たすような仕様(安価なグラスウールを厚くする、複層ガラスのアルミサッシをLow-e複層ガラスにするなど)であれば、60~70万円程度の追加費用で済む場合もあるようです。 「認定取得までの申請費用」は、申請書類の作成や技術審査費用として30万円程度と言われて います。 金額は建設会社によって異なり、15万円程度としているところもあります。 30万円を超えるところは、恐らく書類作成や申請自体を外注しているのではないでしょうか。 申請までの手続きを全て自社で効率的に行えるならば、15~20万円程度に抑えることも可能だと思われます。 これらのことから、100万円程度の追加費用で、長期優良住宅にすることは可能と言えます。

2.長期優良住宅のメリット

2014年9月時点では、主な優遇措置として、以下のものがあります。 (1)フラット35Sの借り入れ金利の優遇 金利が最も有利な「金利Aプラン」(借入金利を、当初10年間0.3%引き下げ)が利用できます。 (2)補助金の交付(「地域型住宅ブランド化事業」) 国土交通省から採択を受けたグループに所属する中小住宅生産者等が、グループの共通ルールに基づき、地域材を活用した木造の長期優良住宅の建設を行う場合、その費用の一部を補助する制度です。 補助金額は、建設費用の1割以内かつ1戸あたり最大100万円です。 なお、本補助金は2014年度内に着工した住宅が対象となります。 2015年度の補助金制度として、国土交通省は、2014年8月28日に「地域型住宅グリーン化事業」の予算概算要求を発表しました。 恐らく2015年度も同程度の補助金制度があるとみてよいでしょう。 (3)各種税金の優遇措置 2014年9月時点で、国土交通省が公開している長期優良住宅の優遇措置は以下の通りです。 z1 例えば、一般住宅では2,000万円で済むところを、長期優良住宅仕様とするために、+100万円で2,100万円借り入れたとします。 (1)フラット35S金利Aプラン(※)を利用すると・・・ ※借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、借入金利年1.66%(2014年9月の金利水準)とした場合 F35s となります。 通常のフラット35は、金利が全年通して同じ(1.66%)なので、総返済額は2,771万円となります。 フラット35S金利Aプランの方が、総返済額で約62万円お得になります。 (2)補助金を利用すると・・・ 「グループに所属している」という条件がありますが、最大100万円の助成が受けられます。 (3)税制面の優遇では・・・ z2 一般住宅と比較して、長期優良住宅のお得な部分を単純に合計すると、今回の想定では、 231万9,600円になります。 仮にグループに参加しておらず、補助金が利用できなかったとしても、コストアップした分の費用を補っていくことは可能でしょう。 さらに、省エネルギー性が高まることで、月々の電気代やガス代のエネルギーコストも下がることになります。 初期の費用が増えたとしても、トータルで見れば、これだけのメリットがあることアピールし、施主に提案することもできます。 誰しも性能の良い家に住みたいわけですから、この機会に長期優良住宅に取り組んでみてはどうでしょうか?