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2011年5月9日


速報:常時微動計測でわかる耐震性能の低下

弊社が所在している茨城県つくば市は、3/11の東北太平洋沖地震で、本震では震度6弱、その後も1ヶ月の間に、震度4以上の余震が9回発生しており、非常強い振動に頻繁にさらされています。 このような状況で、一見健全に見える建物が多くあるわけですが、耐震性に変化はないのでしょうか? そこで、弊社では、震災前後における住宅の耐震性能の変化について、常時微動計測による分析を実施することになりました。弊社がこれまで独自に震災前から調査していた物件について、震災後、再計測を進めております。 このたび、まず13軒について再計測が終了しましたので、以下のとおり速報を記します。 常時微動計測による評価では固有振動数を求め、建物の剛性、すなわち耐震性を評価します。 結果は、固有振動数(Hz)が、木造軸組や2×4の建物においては、平均でX方向で5.4が4.8と0.6の低下、物件によっては最大1.1低下、Y方向では6.4が5.7と0.7の低下、物件によっては最大1.3低下しており、全体的に剛性の低下が確認されました。(=>詳細は、こちらのPDFをごらんください 低下の直接的要因としては、本震、および、度重なる余震で、接合部が緩んだことが考えられます。 この程度の剛性の低下は、建物が倒壊するといった生命の危機に直接的に影響するような耐震性能の低下とはいえませんが、注意が必要といえます。 過去に行われたEディフェンス(実大建物震動台実験)においても、強震動を連続して与えたところ、回数を重ねることによって損壊が発生したという実験結果が示されています。 一方、伝統的構法の住宅では、大きな剛性の低下が見られませんでした。 もともと、他の工法に比べて平均的に剛性は低いのですが、震災後も固有振動数は横ばいという結果でした。 これは伝統的構法建築の特徴である、接合を固めずに、震動を吸収することを考慮されていることによると思われます。 非常に興味深い結果といえるのではないでしょうか。 現在、広く行われている耐震診断法においては、頻繁な強い振動の影響を加味することができません。 今回の常時微動計測システムによる震災前後の評価により、機械計測値という客観性の高いデータに基づく、きめ細かい耐震性能の評価の有用性を示すことができました。 今後、さらに、調査を進め、詳細な分析結果については、弊社セミナー等でお知らせしていきたいと思います。