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2012年2月6日


クロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT)実大試験体の振動実験

2012/2/6、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)で行われた、 クロス・ラミネイティド・ティンバー(以下、CLT)による実大試験体の 振動実験(公開実験)を見学してきました。 試験体_加振前 上の写真が試験体(3階建て)です。やはり、間近で見ると迫力があります! これに地震波(建築基準法で定められた希に発生する地震レベル)を加振して、 建物の変形量などを確認する実験です。 なお、試験体は3階建てですが、5階建て相当となるように、 最上部に2層分に相当する40tの荷重を積載していました。 (屋上に黒い平らな重りが見えます) 2層分の荷重
■CLTについて CLTとは、ヨーロッパ発祥の構法で、木材の挽き板を直交して積層接着した厚型パネルです。 壁や床等の躯体に使用します。 日本においても、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」 (公共建築物等木材利用促進法、2010年10月1日施行)による 中大規模木造建築物を推進するため、CLTの研究(一般化)や普及が期待されています。 クロス・ラミネイティド・ティンバー(CLT) ▼CLTの特長 (1)中大規模の木造建築物の構造材としての利用  ヨーロッパではCLTを用いた中大規模の木造建築物が普及しつつあり、  例えば5~9階建ての木造集合住宅が数多く建てられているそうです。  (日本では数例しかない)  中大規模の木造建築物は、ヨーロッパが日本より進んでいると言われています。  日本においても、公共建築物等木材利用促進法による中大規模木造建築物への  利用が期待されています。 (2)国産材(特に国産杉)の有効活用  繊維方向を直交して積層することにより強度を確保することから、  例えば強度が比較的弱い国産杉でも、一定の強度のパネルを製作できると考えられています。  さらに、杉は比重が軽く断熱性能が高いことから、外国の材よりもCLTに適しているとも  考えられ、公共建築物等木材利用促進法による国産杉の有効活用や利用促進の方法の  一つとして期待されています。  今回の試験体のCLTも、国産材利用の促進の可能性を図るため、  国産杉(30mm厚)により構成されています。 (3)木材(丸太)の歩留まり向上、有効利用  CLT製作において、丸太製材時に出る優良部位以外の羽柄材等を有効利用可能であることから、  丸太製材時の歩留まり向上と木材の有効利用の方法として期待されています。 ▼参考資料 (国土交通省ホームページより)   『「クロスラミナ」を用い、大規模木造建築物の新規市場である     特別養護老人ホーム等への木造化の普及、促進を目指す』     http://www.mlit.go.jp/common/000171390.pdf    ※平成22年度木のまち・木のいえ     「木造住宅・建築物等の整備促進に関する調査・普及・技術基盤強化を行う事業」より     http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000028.html
■実験開始! 今回の実験で使用する地震波は、建築基準法で定められた 希に発生する地震レベルのものです。 カウントダウン後に、加振が始まりました! あくまで目視による感想ですが、特に目立った変形や破壊は見受けられず、 建物の揺れも予想以上に小さく見えました。 30秒ほどで、加振は終わりました。 試験体_加振後 実験担当の方が、壁や床の構面や接合部の状況を注意深く確認していました。 試験体の確認
■実験結果(速報) 静岡大学農学部の安村基教授、国土交通省 国土技術政策総合研究所の槌本敬大氏より、 実験直後に速報が発表されました。層間変位や浮き上がりなどの計測結果も発表されました。 結論としては、今回の試験体は、建築基準法で定められた希に発生する地震による 倒壊を充分免れる耐震性を有していたとのことです。 今後の課題として、次の点が挙げられていました。   ●より強い地震動にどの程度耐えられるか      (CLTは地震が日本より少ない欧州で発祥した部材であるため、さらなる検証が必要)   ●日本の気候・風土に適応できるか
■見学を終えて  今回の実験を見学して、あらためて感じたことがあります。  木造建築物の耐震技術は、緻密な理論の構築だけではなく、  今回のような実験・試験で得られる経験やデータによる裏付けが  大変重要だということです。  今回の実験も、多くの方のアイディアや尽力によるものであり、  大変貴重な経験をさせていただきました。  この経験を業務に活かしていきたいと思います。