倒壊した建物 屋根が吹き飛ばされた建物
広範囲で木造建築物の倒壊や屋根葺材の飛散、窓ガラスの損壊等の被害がみられました。樹木も根本からなぎ倒され、車も飛ばされたり横転したりするほど、非常に大きな被害を目の当たりにしました。 その中での特徴的な被害を、以下に考察を含めまとめます。【基礎ごとひっくり返った建物】
基礎ごとひっくり返った建物と地盤 裏返しになった基礎
ベタ基礎の底盤ごと、地盤から根こそぎもぎ取られ裏返しになった建物です。左の写真ですが、元々建っていた場所には割栗石がそのまま残っています。外周部の根入れ深さが十分だったかは定かではありませんが、内部の根入れ深さは浅かったかあるいは無かったように見受けられました。 [考察] この建物は、新しい建物のため、耐震・耐風性能が高く、基礎と上部構造が十分緊結されていたと思われますが、そのために、基礎と上部構造が一体となって裏返しになってしまったと推測されます。【屋根が丸ごと吹き飛ばされた建物】
片流れの屋根が吹き飛ばされた建物 屋根が吹き飛ばされた建物
屋根が吹き飛ばされた建物 吹き飛ばされた垂木のひねり金物部分
竜巻が直撃した地域では、屋根が吹き飛ばされた建物が非常に多く見られました。中でも屋根葺材が石綿板屋根等の軽い屋根は、特に多く吹き飛ばされていて、軒出がない屋根に関しても全て吹き飛ばされている建物がありました。 下段の写真の建物では、垂木の緊結に関して、ひねり金物が使われていたにもかかわらず、屋根が吹き飛ばされていました。 [考察] 小屋組への吹き上げに対して、抗力が欠けていたために耐え切れず、上記の被害が出てしまったと推測されます。一般的には、ひねり金物や垂木留め用ビス等を用いることで耐力を発揮できると思われますが、今回の竜巻による吹き上げ荷重はその耐力をさらに超えていたと考えられます。【伝統的構法の建物】
伝統的構法の建物 被害の様子1 伝統的構法の建物 被害の様子2
比較的屋根が重く耐力壁が少ないことから、耐震診断上では危険性が高い傾向にあるとされている伝統的構法の建物ですが、被害に特徴が見られました。壁やガラス、屋根瓦の損壊の被害があったものの、屋根が丸ごと吹き飛ぶ被害はありませんでした。 [考察] 重い屋根の場合、地震発生時には建物に加わる力が大きくなり危険側となりますが、竜巻では吹き上げる下から上への力がかかるため、重い屋根が地震発生時とは逆に安全側となり、結果として屋根が吹き飛ばなかったと推測されます。国土技術政策総合研究所と建築研究所の被害報告(※1)によると、今回の竜巻の強さを表すフジタスケール(F0からF6まで、F6が最も強い)は、F2級であると報告されています。 日本では、これまでも今回と同等のものや、さらに強いF3級の竜巻も数回発生しています。 今後もこのような現象が起こることが十分想定されます。常に危険から身を守る術と、耐震性だけでなく、風圧力を割増して設計する等、十分安全性を考慮した構造設計が必要であると考えられます。 ※1 平成24年5月6日に茨城県つくば市で発生した竜巻による建築物被害(速報) URL:http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/saigai/h24tsukuba/h24tsukuba.pdf 国土交通省 国土技術政策総合研究所 URL:http://www.nilim.go.jp/ 独立行政法人 建築研究所 URL:http://www.kenken.go.jp/