▲「3次元温度可視化ツール」
■測定・分析の詳細 厳しい残暑も過ぎ、10月半ば頃からは外気温20℃程度の日が多くなり、だいぶ過ごし易くなってきました。室内が暑いと感じても換気をすれば十分涼しくなります。ところで、換気では窓から冷気を取り込んでいるため、窓側から冷やされていくのですが、換気をしていないときは開発室にはどのような温度ムラがあるのでしょうか。 同じ部屋の中でも、暖かい空気は天井に、冷たい空気は床に集まるため、部屋の中に温度ムラができるといわれます。ただ、温度ムラのでき方は環境によって変わるものです。そこで今回は、「スマートワトソン君」を使って、普段作業している開発室の温度ムラの可視化を試みました。 検証のためには、開発室の各地点の温度を計測する必要があるため、以下のように「温エアー」(温湿度センサー)を計45台設置します。 ・15箇所に「温エアー」をそれぞれ3台ずつ設置(計45台) ・「温エアー」3台をテグスで繋ぎ、天井の梁にピンで留め、「天井付近」 「床面から150cm」 「床面から10cm」の位置で固定 ▲設置後の開発室 ▲設置風景 設置後、2012年10月11日の21:00から翌朝8:00までデータ計測を行いました。 計測対象のデータが多いため、データは「スマートワトソン君」の画面では表示せず、CSVファイル出力後に加工することとしました。「スマートワトソン君」は取得したデータをCSV形式で出力できるので、データの加工が容易です。 まずはデータを表計算ソフトでまとめて、以下のように、平面/立面それぞれについてグラフを作成しました。 ▲温エアーの設置位置と温度 ▲位置ごとに温度分布をグラフ化 間取り図に測定したデータやグラフを重ねてみても、温度ムラの「見える化」には程遠いですね。やはり、3次元のデータは3次元で表現すべきです。そこで『3次元温度可視化ツール』の登場です。 下の図は、作成したツールによって、3次元にセンサーの温度を色分けした図です。 まずは温度ムラが立体的に「見える」ようになりました。 しかし、この表現では温度差が唐突過ぎてまだ不十分です。センサー同士の温度を補間しながら全体的に温度を表現すれば、より実状に近づくと思うのですが、その見せ方は悩みどころです。直方体を並べる方法や、断面を並べる方法など、試行錯誤を重ねた結果、以下のような3次元表示にたどりつきました。 いかがでしょうか。目に見えない温度ムラがうまく伝わりましたでしょうか。 これは窓を閉め切った状態での計測結果ですが、この後エアコンを稼働させたところ、温度は下図のように変化しました。 開発室全体の温度が下がったことが、ひと目で分かります。 時系列に見ていくことで、温度ムラだけではなく温度推移も把握しやすくなりました。 ■まとめ 今回の計測の結果、開発室内でも平面的にも立面的にも2~3℃程度温度ムラがあることが分かりました。空気の性質による温度ムラは感覚としては分かっていたものの、今回、実際に測定し『3次元温度可視化ツール』で分析することで、温度ムラや温度推移を目に見えるものとして表すことができました。効果的なエアコンの設置や使用に役立てることはもちろん、空間を快適に利用する指標となるのではないでしょうか。 今回の計測は試験的なものですが、他のツールと組み合わせることによる「スマートワトソン君」の可能性の広がりを実感しました。