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2013年9月5日


竜巻被害から学ぶ木造住宅の耐風設計について

2013年9月に入り、2日に埼玉・千葉両県で、4日には栃木県で、藤田スケールでそれぞれ「F2」「F1」の竜巻が発生し、建物等に大きな被害を与えました。 被害にあわれた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。 2012年5月には、弊社の所在するつくば市でも竜巻が発生しました。つくば市には、建築研究所や気象研究所も所在しておりますので、そのお膝元で発生し、多くの研究者がその被害を目の当たりにしたといわれています。また、住宅が基礎ごとひっくり返ったり、屋根が吹き飛ばされるといった、建築関係者にとっても衝撃的な被害でした。この竜巻は、当初、竜巻の強さをしめす藤田スケールで、「F2」と発表されていました。この竜巻について、東京工芸大学の田村幸雄教授(建築学・風工学専攻 工学博士)が建物被害の程度から風速を検証する分析に取り組まれ、その際、私どもインテグラルも構造計算の立場から、弊社の構造計算ソフト「ホームズ君構造EX」を用いて、建物重量や建物の風圧力等の計算を行うことで田村教授に協力させていただきました。田村教授は気象庁の竜巻等突風予測情報改善検討会でも発表され、その後、つくば市竜巻は「F3」に修正されました。 インテグラルのブログをご覧になる方々には、住宅の耐震性・耐風性に関心のある方が多いかと思います。そこで、当時の田村教授への情報提供について、以前に当社HPで公開しておりましたが、ここに再度、掲載いたします。 また、竜巻のような強い風に対して、設計上はどのような注意を払うべきなのかの参考にしていただければと思います。まず、建築基準法で考慮している風速はどの程度のものなのでしょうか。「F2」の竜巻は瞬間風速50~69m/s(約7秒間の平均)、「F3」は瞬間風速70~92m/s(約5秒間の平均)です。建築基準法で考慮しているのは基準風速というもので、10分間の平均風速で地域ごとに定義されています。竜巻の発生したつくば市、野田市、越谷市の基準風速は、34m/sで、これを最大瞬間風速になおすと1.4~1.5倍で約47m/sとなります。竜巻の風速は、建築基準法で想定している風速よりはるかに大きいのです。また、基準法で想定している風は水平にふく風であり、竜巻のように吹き上げる風は考慮していません。 つまり、基準法では竜巻のような突風に対する耐風性は考慮されていません。竜巻被害への遭遇確率をふまえれば、警報、避難とか保険などで対応すべきで、それに耐えられるような耐風設計まですると一般には過剰設計にならざるをえないのでそれは適当でないと考えてよいと思います。飛来物による被害も大きいですし。ただし、屋根の飛散に対しての対策として、より引張耐力の高い釘や金物(くら金物など)を採用したり、軒の出を抑えるといった対策が考えられるかと思います。 以下は、2012年5月に田村教授と行った分析等についての再掲載です。詳細にご興味をお持ちの方は、弊社までご連絡いただければ、より詳しい情報提供をいたしますので、お知らせください。 1.つくば市竜巻レポート 株式会社インテグラル 2012年7月発表 (基礎ごと転倒した住宅の重量、および、屋根が飛散した住宅の耐力の検討) 竜巻レポート 2.その他参考情報 1)気象庁発表 現地調査報告 ▼2013年9月2日発生埼玉県・千葉県で発生した竜巻について http://www.nilim.go.jp/lab/bbg/saigai/h25koshigaya/130904tatsumaki.pdf ▼2012年5月6日発生つくば市竜巻について http://www.jma.go.jp/jma/menu/tatsumaki-portal/tyousa-houkoku.pdf 2)東京工芸大学の田村幸雄教授(建築学・風工学専攻 工学博士)による報告 ▼日本風工学会誌 Vol.37(2012) No.3 P217~221 【速報】2012 年 5 月 6 日に北関東地方で発生した広域突風災害について 4.基礎ごと転倒した2階建て木造住宅の限界風速の試算 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jawe/37/3/37_210/_pdf ▼東京工芸大学 大型乱流境界層風洞実験(動画) http://www.wind.arch.t-kougei.ac.jp/system/contents/code/facility_01 3)日経ホームビルダー 2012年7月号(株式会社日経BP発行)P85 「基礎ごと反転したプロセスを解く」 4)インテグラルの過去の社員ブログ ▼2012年5月10日掲載 つくば市竜巻被害 調査報告 https://www.integral.co.jp/blog/other/2012/05/10-758 ▼2012年6月1日掲載「竜巻で基礎ごと転倒した住宅」を想定した風洞実験 https://www.integral.co.jp/blog/other/2012/06/01-1106 ▼2012年6月22日掲載つくば市竜巻 藤田スケール「F2」→「F3」に変更 https://www.integral.co.jp/blog/other/2012/06/22-1214 5)用語 ▼気象庁 藤田(Fスケール)とは http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-5.html